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あなたは「生一本」という言葉をご存知でしょうか?私は「とりあえず生(なま)~」ということだと思ってしまいました。居酒屋などで最初にビールを注文する時の「あれ」です。あるいは「生(なま)いっちょう」ということだと思ったのです。しかし、当たらずとも遠からずお酒のことではありました。「いやいや、全然違いますから」と言われてしまいそうですが。。
では「生一本」はどんな言葉なのでしょうか?
この記事では「生一本」の意味や語源、英語の表現や類義語、使い方の例文をご紹介します。
「生一本」の意味と語源
「生一本」の意味
それでは「生一本」の意味をご紹介します。
まずは読み方ですが「生一本」は「きいっぽん」と読みます。
「生一本」とは「純粋で混じりけのないこと、もの」「純真で心がまっすぐ物事に打ち込む」という意味です。
一途なことも意味しています。
「生一本」の語源
続いて「生一本」の語源をご紹介します。
日本酒用語の「生一本」は「純粋で混じりけのない」という意味があり、製造場所が一つで醸造された純米酒ということを言います。1ヶ所の製造場所で造られたお酒ということになり現代では当たり前のように聞こえるのですが、江戸時代はそうではなかったのです。
江戸時代は大きな酒蔵が「桶買い(おけがい)」と言って小さな酒蔵から桶の中身だけを買い取り、自社の名前の入った桶に入れて販売していたのです。そこから、本当に自分の酒蔵で造った酒のみが「生一本」と呼ばれるようになりました。他の酒蔵の酒を自分の酒蔵の桶に入れ替えて売ると聞くと良いイメージはありませんが、江戸時代ではよく行なわれていたことで、小さな酒蔵にすれば生き残っていくための術でもあったのです。酒の製造が追いつかず、大きな酒蔵でも酒が不足していました。そこで大きな酒蔵は小さな酒蔵に行き中身だけを買い取って販売していたのです。小さな酒蔵もプライドはあったでしょうが、経営のことを考えとそうも言っていられなかったのでしょう。そして、昔は質よりも量だったのでこのような「桶買い」の酒でもバンバン売れたのです。
現在ではこのようなことは行われておりませんが「生一本」という用語は残されており、ある意味「ブランド」として使用されているようです。
「生一本」という言葉は材料などのことではなく、生まれ育った環境が一つの場所ということです。例えば田舎で生まれ育ち、終生田舎を出ることがなかった純粋な人のような感じでしょうか。
「生(き)」という漢字は「混じりけのない」「純粋」という意味があります。「生蕎麦(きそば)」「生醤油(きじょうゆ)」「生娘(きむすめ)」も「純粋で混じりけのない」ということを表しているのです。
「生一本」の英語表現と類義語
「生一本」の英語の表現
次に「生一本」は英語でどのように表現されているのかご紹介します。
- Pure sake(生一本)
- undiluted(生一本、薄めていない)
- sheer(生一本、まったくの、純粋)
【例文】
- I liked the character that was pure sake(生一本な性格が気に入った)
- Though I am obstinate, I am said to be pure sake(強情だけど生一本と言われる)
「Pure sake」の「Pure」は「純粋」「純真」という意味で「sake」はそのまま「酒」「日本酒」のことを言います。「undiluted」や「sheer」などでも「生一本」の意味である「純粋」や「混じりけのない」ということを表現する場合があります。
「生一本」の類義語
「生一本」と似た意味や構成を持つ言葉をご紹介します。
- 生粋(きっすい)
「生粋」は「製造に混じりけがない」ということです。「生粋の江戸っ子」「生粋のお嬢様」などと使用されます。「生一本」と似ていますが、「生一本」は性格や生まれ育ち両方を表し、「生粋」は「生まれ育ち」の場所を表しています。
「生一本」の使い方
最後に「生一本」の使い方を例文でご紹介します。
【例文】
- 「生一本な性格だから、騙されやすいんじゃないかと心配だ」
- 「生一本な性格は、職人に向いているかもしれない」
- 「生一本の酒を樽ごと買い付けてきた」
- 「生一本の酒のように、真っすぐな性格に育ってほしい」
- 「あいつは、生一本だから一途に君を大切にするだろう」
「生一本」はお酒以外にも、純粋な心の持ち主を表します。
「生一本な(性格)」「生一本の(酒)」などと使われることが多いですね。
「生一本」は貴重
お酒の「生一本」はイメージ戦略で「ブランド」としての価値があります。人の性格の「生一本」は「純粋」で「一途」な人です。余計な考えが混ざらずに自分を貫き通す人はすごく貴重な存在だと思います。
お酒の「生一本」は混じりけのないもので品質が守られますが、「生一本」の人は生きる上で少し大変かもしれませんから少しだけ良い要素も取り入れた方がより輝けるのではないでしょうか。
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